バトン

うちの両親が父方の祖父・祖母を旅行に招待した。

俺の家族5人と祖父・祖母の組み合わせ。

場所は茨城県のとある場所。

親父に「何で旅行の場所をここにしたの?」と聞いた所、「近かったから。」と、とてもじゃないが納得しかねる返事が返ってきた。近いだけなら候補は無限にあるだろう。
しばらくして、その宿泊施設は地ビールを作っていることが発覚。
親父が「地ビールってまずくて呑めないのばっかりだけど、ここのはおいしいんだよ。」と満足そうに語りながら、地ビールを呑んでいた。
そういうことね、という感じだった。

祖父はしばらく体調を崩していたけれど、最近やっと少し元気になった様子。
旅行好きな祖父だが、医者から飛行機に10時間以上乗ってはダメと言われたらしく、復調してからもそんなに遠くにはいけなくなったみたいだ。
でもそんなんで、へこたれる祖父ではなく、どうやら船旅に切り替えたらしい。
親父が地ビールに満足している中、祖父は最近行った、全長300m近い、カジノや沢山のレストランが入っている船での船旅の話をしてくれた。
そんな話の最中に、祖父は自分はもう長くはないんだという意味のことを言っていた。
あきらめているというか、受け入れているというか何ともいえない感じだった。

バトンは次へと渡される。次の走者は自分なんだなと感じた。

一人の人間の人生は詳細を覗くととても濃密で、畏怖と尊敬の念を感じざるをえなく、そんな人生がこの世の全ての人にもあって、時間軸で遡ってもどれだけの人生が今の世界を作ってきたかと思うと、あまりの凄さにぞっとする。

奇跡に感謝して、自分も正直に生きていこう。