旅をする木

旅をする木 (文春文庫)

旅をする木 (文春文庫)

星野道夫さんは、アラスカの写真で有名なカメラマン(写真家)である。エッセイ的な本も幾つか出していてこの本はその中の一つ。
僕もアラスカに行ったことはあるけれど、アラスカの自然はニュージランドみたいなエンターテイメント性はなく、本当の自然を感じさせる。それ自身のために存在し、人の存在なんてこれっぽっちも気にかけていない。だからこそ取りつかれる人がいるのだと思う。
星野さんが書く文章は、達観的な文が多い。但し選んでいる言葉はいたって単純で、平易な文章。
アラスカの自然の中に身を置き続ける人にしか見えない、ある種の景色が文章に溶け込んでいる。

「人生はからくりに満ちている。日々の暮らしの中で、無数の人々とすれ違いながら、私たちは出会うことがない。その根源的な悲しみは、言いかえれば、人と人が出会う限りない不思議さに通じている。」